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急性期にはバイタルサインから出血量の推定と重症度判定を行う

止血術後24時間は再出血のリスクが高い

日本消化器内視鏡学会が監修したガイドラインにおいて、緊急内視鏡とは「放置すると全身状態が悪化し重篤になると予想される上部・下部消化管、胆道・膵臓の急性症状に対して、原因の診断、治療、予後判定を目的として、最優先になされる内視鏡検査ならびに治療」と定義されています。

適応となる病態・疾患としては吐血・タール便、異物の誤飲、胃アニサキス症、胃十二指腸潰瘍穿孔、血便、S状結腸軸捻転…などが挙げられますが、消化管出血に伴う疾患が最も多く、全体の90%近くを占めています。そのため、ここでは消化管出血時の対応を中心に見ていきます。

患者の全身状態を正しく把握し、適切な処置を行うことは、より安全に緊急内視鏡を行うために非常に重要です。そのため、病歴聴取、理学所見、血液検査や画像検査(X線、腹部超音波、CT)を行い、病態を把握する必要があります。

消化管出血が考えられる病態では、まずバイタルサインの評価を行い、落ち着いていると判断できれば緊急内視鏡の適応となります。一方、患者がショック状態にある場合は、検査中の術死のリスクがあるため、バイタルサインが改善するのを待ちましょう。

また、ショック状態では輸液や輸血による循環動態の回復を優先させますが、急性期には出血量に見合った赤血球やヘマトクリットが低下を示さないため、バイタルサインから出血量の推定と重症度判定を行うことが大切です。

緊急内視鏡は平日の昼間は勿論、スタッフの少ない夜間や休日でも施行しなければならないため、病院・診療科ごとに施行体制を構築しておくことが必要です。偶発症などの非常事態に備えて、術者と助手のほかに外回りのスタッフを1名確保していることが望ましいでしょう。術者単独で行ってはいけません。また、緊急症例では状態が不安定なため、術前のインフォームド・コンセントは必要不可欠です。

前投薬

鎮静・鎮痛薬を使用する際には、通常の検査以上に注意が必要です。不穏や苦痛が激しい場合、また処置時間が長期に及ぶ場合など内視鏡検査に支障をきたす場合には、ジアゼパムやミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系鎮痛薬や、ペンタゾジンなどの鎮痛薬の使用を考慮します。

ただし、バイタルサインが安定しているか、禁忌やハイリスク患者でないかの確認を忘れてはいけません。使用量に関しては、患者の状態や手技の苦痛度により変わりますが、過度の鎮静・鎮痛は血圧の低下や呼吸抑制を招くため注意が必要です。

モニタリング

循環モニタリングは、非観血的自動血圧計による血圧・脈拍のモニタリングを行い、不整脈や心不全、虚血性心疾患の患者では心電図も追加します。呼吸モニタリングでは、パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度のモニタリングを行います。

止血方法

複数ある止血術の選択基準は患者の状態や担当する医師によって異なりますが、状況に応じて最も適切な方法を選択することが重要です。具体的な方法は以下の通りです。

1.クリップ法…小型クリップで直接血管と周囲組織を把持して止血する方法です。クリップ装填専用の装置にワンタッチで装着し、術者の指示に従って手元の捜査でクリップを閉じます。

2.エピネフリン添加高張食塩水(HSE)局注法…エピネフリン液を高張食塩水で希釈し、出血店の周囲に直接打ち込んで止血する方法です。エピネフリンによる血管収縮作用と食塩水による物理的な圧迫止血作用で止血するもので、露出血管周囲3〜4箇所に1〜2mLずつ注入します。組織傷害はエタノールよりも少なく、安全に使用できます。

3.凝固止血法…内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の際に使用するディスポーサブル高周波止血鉗子を用いて止血する方法です。鉗子により組織を把持した状態で高周波電流を通電することにより、組織の焼灼凝固および止血ができます。

4.内視鏡的静脈瘤結紮術…主に、食道静脈瘤に対して行われる止血術です。先端フードにOリングと呼ばれる輪ゴムを装着し、出血部位を粘膜ごと吸引し結紮します。捜査は比較的簡便で、高い止血効果が得られます。

施行後は循環動態が安定するまで継続して、頻繁にバイタルサインを測定します。原則として術後は絶食であり、上部消化管はプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬の投与を行います。また、止血処置が上手くいかなかったときや原因の特定ができなかったときには、他の検査法や侵襲的放射線療法(IVR)、外科的治療を考慮する必要があります。

 
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