消化器領域で症例を積みたい先生へ

色素内視鏡検査法で使用される色素剤と散布の注意点

内視鏡検査中に各種の色素剤の散布を行い、その反応を観察する「色素法」は、病変の認識・病変範囲の確定・深達度の評価に有用です。日本の消化器内視鏡の診断技術は世界トップレベルにあると高く評価されていますが、その要因として、海外に比べて異常が疑われる場合に色素散布と生検を積極的に行っている点が挙げらます。

手法 使用する色素の例 原理
コントラスト法 インジゴカルミン 色素液のたまりを利用して、病変の凹凸を強調します
染色法 トルイジンブルー
メチレンブルー
色素液が生体組織を染色する現象を観察します
反応法 ルゴール
クリスタルバイオレット
色素剤がある特定の環境下で特異的に反応する現象を観察する方法
蛍光法 フルオレスチン
アクリジンオレンジ
色素の蛍光発現を観察します
血管内色素投与法 インドシアニングリーン 血管内に色素を投与し、臓器が色素によって発色する現象を観察します

色素剤には様々な種類があり、それぞれ原理や色彩が異なるなどの特徴があります。したがって、一口に色素法といっても、部位や病変によって使用する色素剤は異なります。上の表は主な色素剤の分類とその原理を簡単にまとめたものですが、消化器内視鏡の診断で使用頻度の高い色素剤とその特徴は以下の通りです。

インジゴカルミン

現在最も使用される頻度の高いコントラスト法の代表的な色素剤(紺色)で、胃・小腸・大腸の病変に対して、通常検査から精密検査まで幅広く使用されています。人体に対して比較的無害で安全性も高いため、どのような患者に対しても安心して使用できます。

0.4%・5mLのアンプルが市販されていますが、通常はこれを4〜5倍に希釈して使用します。希釈の際には消泡剤であるガスコンドロップを少量混ぜておくと、散布した際に泡が立たないため、観察対象の表面の凹凸が明瞭になり、病変が目立つようになります。検査後に尿が青色に着色することがありますので、その旨を患者に説明しておく必要があります。

ヨード法(ルゴール法)

反応法の1つで、食道病変(特に食道がん)の検査には欠かせません。通常は褐色調ですが、正常食道上皮のグリコーゲンと反応して、黒褐色に変色し、病変部(変色しない)が浮き上がって見えます。ただし、食道上皮に異常がある場合はグリコーゲンの量に変化が生じ、変色が弱くなったり、変色しなかったりします。また、がん以外にも、炎症などでもルゴールに染まらないこともあります。

ルゴールを散布する際に注意しなければならないことは、その強い刺激性のために、散布後に胸痛や胸が染みるなどの症状を訴える患者が多く、その症状は数時間から1日続く、という点です。また、ルゴールを誤嚥すると強い"むせ"を生じるため、検査にも支障が出ます。ルゴールを散布する際には必ず患者に「胸がしみるが驚かないでください」「喉に上がってきた液体(ルゴール)を飲み下さないでください」と伝えておく必要があります。検査後はチオ硫酸ナトリウム液(商品名:デトキソール、ハイポエタノール)で、ルゴールを洗い流します。

トルイジンブルー

主に食道の病変に使用される色素剤です。食道上皮が欠損した場合、そこに付着した壊死物質を青色に染色しますが、表面に付着した粘液も染めてしまうため、使用する際にはガスコン水などで十分に洗浄することが必要です。早期食道がんの精密検査の際に、上記のルゴール法と併用するのが一般的です。

クリスタルバイオレット(ピオクタニン)

細胞の核を染色する薬剤で、以前は胃の色素内視鏡に使用された時期もありましたが、現在では主に大腸の拡大内視鏡の際に使用されています。病変が青色に変色し、表面の模様が浮き立ってくるため、この模様のパターンを拡大内視鏡で観察することで病変の性状(良性or悪性など)を判断することができます。

クリスタルバイオレットは通常1%溶液で保存し、使用に際して20倍程度に希釈します。なお、拡大内視鏡に用いる色素剤としては、他にインジゴカルミンやメチレンブルー、クレシールバイオレットなども用いられています。

新しい色素内視鏡法、酢酸法

近年、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及し、内視鏡的に正確な範囲診断が求められるようになりました。しかし、Ub病変やUc病変のなかには、通常観察やインジゴカルミン散布だけでは範囲の同定が困難なものもあります。そのため、範囲診断の精度を高めるために様々な試みがなされ、狭帯域光観察(NBI)併用拡大内視鏡、酢酸散布法、酢酸エンハンス拡大観察法、酢酸散布・インジゴカルミン併用法などが開発されました。

酢酸を使用する方法は、酢酸散布により粘膜が白色化することを利用して鮮明な画像を得る内視鏡検査法です。非がん部の粘膜は、白色から従来の色調に戻るのに数分かかりますが、がん部は非がん部に比べて早期に白色化が消失します。そのため、がん部が赤く観察されコントラストが生じ、がんの診断範囲が容易になります(酢酸散布法)。

引き続き拡大観察を行うことで、粘膜模様を立体的に観察でき、通常観察では観察しにくいがん部の表面構造も描出できるようになります(酢酸エンハンス拡大観察法)。また、酢酸散布後にインジゴカルミンンを散布すると、非がん部にはインジゴカルミンが付着しますが、がん部には付着しないため、酢酸単独に比べ、より境界を明瞭にすることができます(酢酸散布・インジゴカルミン併用法)。

 
Copyright (C) 2015 内視鏡検査ガイド All Rights Reserved.